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理学療法士が教える筋力トレーニングの実際【基本編】

心と身体のメンテナンス

 みなさんは筋力トレーニングをしたことがありますか?部活などのスポーツのためやダイエット、健康のためにするなど取り組んだことのある方も多いと思います。ただ筋力トレーニングには効果を出すための原則があることはご存じでしょうか?筋力トレーニングに取り組んで効果が出なかった方、もしかしたらこの原則から外れていたかもしれませんよ?そこで今回は筋力トレーニングの基本原則のお話をまずさせて頂きたいと思います。

筋力とは何か?

 筋肉が収縮することで生じる筋の張力を筋力と言います。そして最大努力下で発揮できる最大の力を最大筋力といいます。この最大筋力は①平均の筋線維の断面積、②筋線維のタイプ、③筋線維の数、④筋断面積あたりの筋力、そして⑤脳の興奮の5つの要素のかけ算で表すことができます。つまり筋力を強くするためには筋自体を大きくすることだけではなく、脳の興奮である神経の変化も関与するということになります。(この脳の興奮については説明が複雑になりますのでまた別の機会で説明したいと思います。)つまり筋力はこの5つの要素で変動していくため、筋力トレーニングを行う場合にはこれらの要素のどれをターゲットにして、筋力を増強させようとしているのかを考えてトレーニングを行う必要があります。

筋の収縮様式

 筋力を増強させようとした場合,筋の収縮が必ず必要です。その収縮は①等尺性収縮、②等張性収縮、③等速性収縮の3つの様式があります。
 等尺性収縮は関節運動のない収縮であり静的収縮とも言います。等張性収縮は関節運動を行い、動的収縮とも言われています。等張性収縮は更に筋が抵抗に打ち勝って収縮する求心性収縮と筋が抵抗に抗しきれずに筋の長さを長くしながら収縮する遠心性収縮があります。遠心性収縮は求心性収縮に比べ筋の発揮する張力が大きく筋に対する負荷も大きくなるため、その使用にあたっては筋肉の損傷に注意を払う必要があります。等速性収縮は、専用の機器を使用することで可能となる収縮様式になるので一般の方では困難な運動の様式となります。

筋力トレーニングの原則

 筋力を強くするための運動には大きく2つの原則が存在します。

過負荷の原則

 筋力トレーニングにより筋力を増強させるには、一定量以上(少し疲れるくらい)の負荷を加えて、ある時間・ある程度以上筋を収縮させることが必要で、これを過負荷の原則と言います。その負荷には①運動の強度、②運動の持続時間、③運動の頻度、④運動の期間の 4 つの基本条件があり、この 4 条件が満たされて初めて運動の効果が期待できると言われています。また運動を継続していく中でも過負荷の原則に基づき、常に運動強度を適度に増やしていくことも重要です。

運動の強度

一般的に最大筋力の 20~30%の強度で筋力は維持され、筋力増強を目的とした場合には最大筋力の60%以上の強度が必要と言われています。逆に最大筋力の20%に満たない負荷では筋力が落ちていきます。また筋持久力の増強を目的とした場合には 35%以上の強度が必要と言われています。

運動の持続時間

 筋力トレーニングの効果を得るためには、ある程度以上の運動強度をある一定時間行わなければなりません。等尺性収縮ではその収縮時間、等張性収縮ではその反復回数を変化させていく必要があります。等尺性収縮による筋力増強運動の強度と収縮時間の条件は最大筋力の60~70%の強度では6~10秒、80~90%の強度では4~6秒、100%の強度では2~3秒と言われています。また等張性収縮による運動の強度は最大筋力 1RM(1回だけしか耐えることのできない運動強度)に対する反復可能な回数で表すことができます。1RMに対して90%の強度では3~6回、80%では8~10回、70%では12~15回、60%の強度では15~20回の反復回数が要るといわれています。

運動の頻度

 ある文献では週 3 回の頻度のほうが週 2 回に比べて効果的であるとする報告があり、週 2 回の頻度では週 3 回の頻度に比べその効果が 80%相当であったという報告などもあります。一般的には毎日 1 回が最も効果的で、5 日に1回では その効果は50%に効果が下がり、2 週に 1 回の効果はゼロ、それ以上期間を延ばすと効果はマイナスになるといわれています。

運動の期間

 筋力の筋力の増強には,「筋力とはなにか」で記載した通り筋自体の変化によるものと、筋収縮をつかさどる神経の変化によるものがあります。ある文献では、筋力増強運動開始後、数週間の筋力増強は神経性によるものであり、筋自体の変化は 3~6 週以降であると報告しています。

筋力トレーニングの特異性

 筋力トレーニングの結果、生じる筋の適応は、負荷内容を反映した形で現れます。しかもその効果は行った筋力増強運動と同一の筋活動の条件下において最も顕著なものとなります。この現象がトレーニングの特異性といわれています。具体的には筋力増強運動中の筋収縮様式や負荷、動作様式などの要因が効果に影響します。

筋の収縮様式から見た特異性

 これは、筋の収縮様式の等尺性収縮か等張性収縮いずれかを主体とする運動を実施した場合にその運動と同一の収縮様式の条件における筋力の増加率が他の収縮様式で運動した場合よりも高いということです。つまり、等尺性収縮を用いた筋力増強運動を行った場合には等尺性収縮での筋力が増強し,等張性収縮では等張性収縮での筋力が増強するということです。

負荷様式からみた特異性

 高負荷・低頻度の運動は最大筋力を増加させ、低負荷・高頻度の運動は筋持久力を増加さます。このように運動中の負荷強度あるいは運動速度によって、運動の効果が特異的になることが負荷様式からみた特異性です。つまり、強化が必要な負荷あるいは速度条件において運動を行うことで、その条件下における筋の出力が効果的に高まります。

動作様式からみた特異性

 これは実際に行った筋力トレーニングと同一の動作様式において発揮される筋力の増加率が、他の動作様式で発揮される筋力よりも高いという特異性であります。例えば筋力増強運動としてスクワット動作を選択した場合にはスクワット動作自体での筋力の増加率がスクワット動作と同一の筋を使用すると考えられる垂直跳や脚伸展筋力などと比較しても高くなり、また筋力増強運動が実際に行われた関節角度付近での筋力増加率が最も高く、筋力増強運動を実施した関節可動域が狭いほど筋力の増加は実施された関節可動域内に限定されます。

まとめ

 以上のことから効果的な筋力トレーニングを行うためにはこの2つの原則を意識してプログラミングを行うことが重要と言えます。筋力トレーニングの目的が筋肉を太くしたいのか、筋力を強くしたいのか、筋持久力をつけたいのかによっても負荷量や持続時間なども変化させていく必要があるので必ず目的はしっかりと定めて開始することをお勧めいたします。是非しっかりと目的とプログラミングを立てて筋力トレーニングに臨んでみて下さい。

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